第46回応用動物昆虫学会大会:小集会のお知らせ

鱗翅目で語る進化:遺伝マーカーの効用

世話人 廣田 忠雄 (ICU・理)・中 秀司 (岐阜大・生物制御)


鱗翅目の性比異常とバクテリアとの複雑な関係

田上陽介 (広大・生物圏科学)・三浦一芸 (広大・生物圏科学,近中四農研)

 鱗翅目において性比が雌に偏っている個体群の報告は比較的古くからあり,その至近的要因や究極的要因について多くの議論がなされている (Cockayne 1938, Hurst 1993他)。近年,バクテリアの遺伝マーカーを利用することによりバクテリアの検出が容易にできるようになってきた。そのため,昆虫を含む多くの節足動物においてバクテリアが宿主の性を操作していることが明らかとなっている (Stouthamer et al. 1999, Hurst & Jiggins 2000)。鱗翅目においてもバクテリアによる「遺伝的な雄の雌化」や「雄殺し」という操作により,性比異常が引き起こされることがかなり報告されてきた (Kageyama et al. 1998, Jiggins et al. 1998他)。そのような雌に異常に偏る性比をとる個体群は絶滅する可能性がある。なぜなら鱗翅目ではほとんどの種が次世代を残すためには雄との交尾を必要とするためである。しかしながら細胞質遺伝するバクテリアにとっては,宿主を雌に偏らせることが適応的となる。このため鱗翅目とバクテリアの間には複雑な関係が生じている。そこで本講演では,鱗翅目における性比異常とバクテリアとの関係について現在までの知見を紹介し,性比異常が維持される条件について考えてみる。
    講演者の最近の活動     <講演者のホームページ
  1. Tagami Y, Miura K. (2000) Detection of Wolbachia from the Cabbage White Butterfly. First Int. Wolbachia Conf. Programs and Abstract, 98.
  2. Tagami Y, Miura K.,Stouthamer R (in press) How Does Infection with Parthenogenesis-Inducing Wolbachia Reduce the Fitness of Trichogramma?
  3. Hiroki M, Kato Y, Kamito T, Miura K (in press) Feminization of genetic males by a symbiotic bacterium in a butterfly, Eurema hecabe (Lepidoptera: Pieridae)
系統樹


キタナイ写真でゴメンナサイ
個体群構造の理解から、飛翔能力の進化まで

廣田 忠雄 (ICU・理・生物)

 鱗翅目の個体群の構造は、標識再捕獲法や染色した卵の分布を調査でもできる。しかし、遺伝子交流を定量的に評価するためには、遺伝マーカーを用いた調査は欠かせない。近年アロザイムに加え、DNAマーカーを用いた解析によって、個体群の遺伝構造の解明が進んでいる。メタ個体群を対象にした調査では、多様性を喪失した局所個体群は絶滅確率が増加することが確認されており、保護管理の観点からも遺伝的多様性の測定は重視されている。更に、個体群の間の遺伝子交流や、地理的隔離の履歴が明らかになれば、個体群間で変異が豊富な形質については、その淘汰圧や進化機構を解明する機会が広がっている。今回は、個体群の孤立化・分断化と飛翔能力の進化を例に総説したい。
    講演者の最近の活動     <講演者のホームページ
  1. Hirota T, Kato Y (2001) Influence of visual stimuli on the host location in the butterfly, Eurema hecabe. Entomologia Experimentalis et Applicata 101(2): 199-206.
  2. Hirota T, Hamano K, Obara Y (2001) The influence of female post-emergence behavior on the time schedule of male mate-locating in Pieris rapae crucivora. Zoological Science 18(4): 475-482.
  3. Hirota T, Obara Y (2000) The influence of air temperature and sunlight intensity on mate-locating behavior in Pieris rapae crucivora. Zoological Science 17(8): 1081-1087.
  4. Hirota T, Obara Y (2000) Time allocation to the reproductive and feeding behaviors in the male cabbage butterfly. Zoological Science 17(3): 323-327.

戻る大会案内トップページ

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送